絵本2023.11.10
絵本のコラム第3回目のテーマは、こちら!
お悩み:「絵本を読んでいる途中なのに、よそ見をしていたり、ウロウロ歩き出す。集中して見てくれない。うちの子は本が嫌いか、集中力がないのだと思います。読んでいるこちらもイライラするので、読むのが嫌になります。」
・・・これ、すごくわかります。実は私も経験があります。(笑)
私には二人の娘がいますが、下の子がこのタイプの子でした。
仕事で疲れているけれど、「絵本を読むといい」と知っているから、“頑張って”読む。なのに、よそ見をしている。ウロウロその辺を歩き出す。次々ページをめくる…「この子は絵本が好きじゃないのかな。」「この時間、本当に楽しいのかな?」と思っていました。
このお悩みへのお答えには、まず、「聞いていないようで、実は子どもは聞いていることがある」ということをお伝えしたいと思います。
よそ見をしながら、または、近くをウロウロ歩き回りながら、耳でお母さんやお父さんの声を聴いている、ということはよくあります。絵本は、絵を見ないと楽しめないのでは?という意見が出てきそうですが、それは人それぞれ、楽しみ方が違うだけです。その子は、その時は、耳で声を聴いて、楽しむ方法を選んでいるのです。
お母さん、お父さんが、自分に向けて生の声で語りかけてくれること、しかも、それがいつもの会話の話し言葉ではない、いつもは使わないような単語や音やリズムである、ということは、実はとても大切なことです。大好きな人の声で語られることばから、子どもたちの頭の中では、ことばのネットワークがどんどん広がっていくのです。まずは、音声から。ことばは、音声からその子の中に定着していきます。
一見「絵本を全然見ていないから、楽しんでいない」ように見える子も、読むのをやめると、すっと隣に戻ってきたり、「終わり?」と聞いてきたりすることがあります。これは、図書館などで読み聞かせをしていらっしゃる方からもよく聞くお話です。
ですから、「ああ、今耳で聞いて楽しんでるんだな。」と思って、そのまま、おしまいまで読んであげていただけたらいいと思います。
「・・・え、でも、うちの子は、もう声も聞こえないくらい遠くまでどこかに行ってしまうんですけど・・」という方もいらっしゃるかもしれません。それは、もしかしたら、そのお子さんにとって、その時は、絵本を読むタイミングじゃなかったのかもしれません。
そんな時は「もういいかな?絵本は“今は”やめとく?」と聞いてあげてください。「もういい。」と言われたら、あとは、やめるも、続けるも、お母さん、お父さんの自由です!そして、また違うタイミングで絵本読もうか!と誘ってあげてみてください。お子さんが「読んで。」持ってきたら、もちろん、その時にぜひ!
実は、絵本を読むタイミングが「寝る前」がよい、とよく言われるのは、こういうことも理由です。テレビやおもちゃや、ほかに気になるものがあれば、そちらに関心が行くのは、自然なことです。が、お布団の中だと、もうあとは寝るだけ、なので、お子さんの関心は、絵本にフォーカスされます。より、親子一緒に世界を楽しむことができるわけです。
うちの子の場合は、まだ読んでいる最中なのに、次々とページをめくって、パタン、と閉じて、「はい、おしまい。」と言って、どこかにいってしまう、ということが多かったです。これも、おそらく、タイミングが違っていたか、ぺらぺらめくって、「おしまい。」というのが楽しいから、または、とにかく次のページの絵を見たい・・・などなど、今なら考えられる理由は色々あります。が、当時は、「絵本好きじゃないのかな?」と思っていました。当時、下の子がまだ2歳、3歳のころだったと思います。
・・・で、結局、どうしたか? 私も、その時は、どうとらえてよいのかわからなかったのですが、上の子が絵本好きだったので、上の子には絵本を読み続けていました。下の子は、その間、周りをウロウロしては、時々、そばに戻って覗いてしばらく見て、またよそ見をして・・・という感じだったので、本当は耳で聞いていたのだと思います。そのうち、自分の好きな絵本を持ってくるようになりました。そして、そのうち、どんどん、ウロウロする時間、よそ見する時間が短くなっていき、最終的には好きな本を何度も持ってきて、絵本を最後までじっと見て楽しむようになりました。
そして、今、大きくなってから改めて聞いてみると、「絵本を読んでもらうのは好きだった」そうです。(笑) もちろん、遊びたいのになぁと思っていた時もあったし、お姉ちゃんに読んでいた本はよくわからなくて、つまらないと思っていたこともあったそうですが、「覚えてる絵本ある?」と聞くと、当時読んでいた絵本のタイトルを何冊もあげて、「めっちゃ覚えてる~!!」と嬉しそうに話しをしてくれます。(現在大学生)
・・・つまり、その子なりのペースやタイミング、関心の強弱はずっと一緒ではない、ということです。うちの場合は、上の子に読む必要があったこともあり、「読み続けていた」ことで、それがわかりました。その当時「絵本が好きじゃないのかも」とこちらが勝手に判断して、それ以降、絵本を読むのを辞めてしまっていたら、この親子の共有時間は存在しなかったのだと思うと、読み続けてよかった、と思います。
「うちの子は読んでも聞いてくれない=絵本が嫌い」と大人が勝手に判断して、絵本の読み聞かせそのものを一切やめる、というのは、とてももったいないことなのです。
ぜひ一度、タイミングや絵本の内容など、色々変えてみて、ためしてみてください。
明らかに嫌がっている様子がある、声の届かないところに行ってしまう、違う遊びを始めて、明らかに全く聞いていない、などの場合は、寝る前など、絵本だけに関心が行く状況や違うタイミングにしてみる。
お子さんの年齢より少し下の年齢が対象と思われる絵本を読んでみる。絵本は、内容によって、年齢の下の制限は多少ありますが、上の年齢制限はありません。ですから、たとえば、3歳の子に、「0歳向け」と書かれている絵本を読んであげるのは、すごくいいことだと思います。(小学生に赤ちゃん絵本、も、とてもよいと思います!!)
ですので、「もう●歳なのに???」と思われるかもしれませんが、赤ちゃん向け(とされている)絵本は、読んであげる価値は“十分に”あります。絵本の楽しさをゼロから味わってもらえたらいいのではないかと思います。
園で読んでもらった絵本と同じ作品をおうちでも読む。子どもたちは、「知っている」絵本を何度も大好きな人の声で聴きたいのです。「これ知ってる!先生が読んでくれた!」という作品は、「物語の見通しがつく」ので、最後まで楽しむことができます。大好きなお母さん、お父さんの声で、何度も何度も同じ作品を楽しむことができる!というのは子どもたちにとって、至福の時だと思います。
「せっかく読んであげているのに、聞いてくれない」と思うから、むなしくなる。お母さん、お父さんが「自分のために」読んでみる、というのはいかがでしょう?声を出す、というのは、ストレス解消にとてもよいことです。しかも、日頃、仕事や会話ではめったに使わない単語や、音、リズム、文章を音読する、というのは、脳の活性化を促します。また、声を発する時、一番最初にその声を聴くのは、本人である、ということから、発した言葉の影響を一番受けるのは、その本人だ、と言われています。絵本に書いてある、作家さんたちが紡いだ言葉の数々を、声を出して読むことで、ご自身に読み聞かせしてあげる。文字を追うので、その間、絵は観れませんが、声はご自身の中に響きます。読んだあとに、じっくり絵をもう一度観る、というのもよいですし、ご夫婦で読み聞かせし合う、というのも、実はとてもおススメです。(事実、大人同士の読み聞かせのイベントは最近とても増えています)そうしてる間に、お子さんも一緒に聞いてくれるかもしれません。「せっかく読んであげるんだから、集中して、ちゃんと聞いて!!」となってしまうと、子どもたちにとっては、「我慢の時間」になってしまい、せっかくの絵本の時間が台無しになってしまいますよね。大人は、大人の解釈で絵本を楽しむことができます。ぜひ、絵本の世界の奥深さを楽しんでください。
絵本は、ただ書いてある文を読めば、それだけで、子どもたちに「あなたのことを大好きで愛している」という「愛情」を伝えることができて、同時に、人として生きていく力となる「ことば」を手渡してあげることができます。特別なスキルや素敵なセンスなどが、一切必要ない、「誰にでもできる」愛情表現です。
一緒に音楽を聴くのを楽しむように、親子、ご家族で、ぜひ同じ世界を共有して楽しんでください!
~おススメ絵本~
『ハグしてぎゅっ』
ナンシー・カールソン 作
なかがわちひろ 訳
2歳ころから大人まで
~おススメ絵本~
『ハグしてぎゅっ』
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